膝のトラッキング障害とは?

いつもご覧頂きありがとうございます。
新所沢駅東口徒歩3分のさくら堂整骨院です。
「膝のトラッキング障害」という言葉は、主に医療分野で使われ、膝の皿(膝蓋骨:しつがいこつ)が、膝を曲げ伸ばしする際に正しい軌道(トラック)からずれてしまう状態を指します。
膝蓋骨は、大腿骨(太ももの骨)の先端にある溝(滑車溝:かっしゃこう)の中を、滑らかに上下に動くことで、膝の曲げ伸ばしをスムーズにしています。この膝蓋骨が何らかの原因で正常な動きをせず、横にずれたり、傾いたり、引っかかったりする状態が「トラッキング障害」です。医学的には「膝蓋骨マルトラッキング」や「膝蓋骨トラッキング不全症候群」などと呼ばれることもあります。
主な症状
膝のトラッキング障害による症状は様々ですが、代表的なものには以下のようなものがあります。
- 膝の痛み: 特に膝のお皿の周りや、膝を曲げ伸ばしする際に痛みが生じやすいです。階段の昇り降り、しゃがむ動作、椅子から立ち上がる際などに痛みが強くなることがあります。
- 膝の違和感・引っかかり感: 膝を動かした時に、お皿が引っかかるような感覚や、ゴリゴリとした音がすることがあります。
- 膝の不安定感: 膝がガクッと抜けそうな感覚(膝くずれ)を覚えることがあります。
- 腫れや熱感: 炎症が起きている場合に、膝が腫れたり熱を持ったりすることがあります。
主な原因
膝のトラッキング障害の原因は多岐にわたります。 - 筋肉のアンバランス:
- 大腿四頭筋(太ももの前の筋肉)の筋力低下や柔軟性の低下: 特に、膝蓋骨を内側に引っ張る作用のある内側広筋の筋力低下は、膝蓋骨が外側にずれやすくなる原因となります。
- 腸脛靭帯(太ももの外側の靭帯)の短縮・過緊張: 膝蓋骨を外側に引っ張り、外側へのずれを助長することがあります。
- 股関節周囲の筋肉の筋力低下や柔軟性の低下: 股関節の動きの悪さが、膝への負担を増やし、膝蓋骨の動きに影響を与えることがあります。
- 骨の形態異常:
- 膝蓋骨や大腿骨の溝(滑車溝)の形状異常: 生まれつき、膝蓋骨が収まる溝が浅い場合や、形が合わない場合にずれやすくなります。
- Qアングル(膝蓋腱と大腿四頭筋のなす角度)の増大: 膝蓋骨が外側に引っ張られやすい角度になっている場合。
- 外傷・使いすぎ:
- スポーツなどで膝に繰り返し負担がかかることで、周囲の組織に炎症が起きたり、微細な損傷が生じたりすることがあります。特にジャンプやランニングを多く行うスポーツ選手に多いです。
- 膝蓋骨の脱臼や亜脱臼を繰り返すことで、不安定性が増すことがあります。
- 関節の緩み(全身性関節弛緩性): 関節が全体的に柔らかい体質の人も、膝蓋骨がずれやすい傾向があります。
- 日常生活の習慣: 長時間の立ち仕事、重い荷物を持つ習慣、姿勢の悪さ、合わない靴の着用なども、膝に負担をかけ、トラッキング障害を悪化させる要因となることがあります。
治療法
膝のトラッキング障害の治療は、原因や症状の重さによって異なりますが、多くの場合、保存療法が中心となります。 - 物理療法: 温熱療法、電気刺激、マッサージなどを用いて、痛みの緩和や血行促進を図ります。
- 運動療法・リハビリテーション:
- 筋力強化: 大腿四頭筋(特に内側広筋)、股関節外転筋、体幹筋などの筋力強化を行います。
- ストレッチ: 腸脛靭帯や大腿四頭筋など、硬くなった筋肉や靭帯の柔軟性を高めます。
- バランス訓練: 膝の安定性を高めるための訓練を行います。
- 装具療法:
- テーピング: 膝蓋骨を正しい位置に誘導するためのテーピングを行います。
- 膝サポーター: 膝蓋骨の安定性を高めるためのサポーターを使用します。
- 足底板(アーチサポート): 足のアライメント異常が原因の場合に、足元からバランスを整えることがあります。
- 薬物療法: 痛みや炎症を抑えるために、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)などが処方されることがあります。
- 手術療法: 保存療法で改善が見られない場合や、膝蓋骨脱臼を繰り返すなど重度のケースでは、手術が検討されることがあります。手術では、膝蓋骨の安定性を高めるための処置(例:内側膝蓋大腿靭帯再建術)や、骨の形態を修正する処置などが行われます。
膝のトラッキング障害は、放置すると慢性的な痛みにつながったり、関節の軟骨に損傷を与えたりする可能性があるため、症状がある場合は早めに整形外科や当院へ受診していただき、適切な診断と治療を受けることが重要です。
